Aさん(男性・40代)は、バイクでの通勤中、脇道から出てきた自動車に衝突され、大腿骨遠位端開放骨折等の傷害を負いました。骨折箇所が複数に及んだため、長期間の入通院を余儀なくされ、Aさんは長らく会社を休まざるを得ませんでした。
折しも、世の中には不況の嵐が吹き荒れ、名立たる企業が次々と営業規模を縮小したり、倒産に追い込まれたりしていました。Aさんの会社もその例外ではなく、賞与の減額や支給見送りがありました。
そのような中、Aさんは必死にリハビリを行い、数度の手術を乗り越えて、どうにか職場復帰を果たしました。しかし、事故前は主として肉体労働を行っていたAさんは、下肢に負荷が掛けられないために内勤となりました。その結果、賞与減額に留まらず、各種手当が削られ、事故の前後で、年収額に大きな差が開いてしまいました。
Aさんは、後遺傷害等級の獲得を目指してサリュを訪れました。サリュでは残存した症状の深刻さから、目標とする後遺障害等級を神経症状12級に設定しました。受任後、資料を収集して速やかに後遺障害等級の申請を行い、目標等級を獲得しました。
後遺障害が残存した場合、その症状のために、将来にわたって収入の制限が生じるとされます。将来に及ぼす影響の程度については、後遺障害の等級と内容によって異なりますが、一般的には、事故前年の年収を基礎として、たとえば神経症状の12級であれば10年分を、中間利息を控除して請求することになります。
しかしAさんの場合、神経症状の原因は明らかに骨折部分の不整癒合によるもので、後遺障害の認定理由書上にもその旨記載がありました。不整癒合の場合、通常の神経症状とは異なり、その症状が時間の経過によって和らぐことは少なく、むしろ骨の不整が時間と共に深刻化し、変形性関節症等の2次的な症状を引き起こすこともありえます。
そこでサリュは、逸失利益について、事故前年の年収を元に、就労可能年齢67歳までの請求をすることにしました。
これに対し、加害者側保険会社からの回答は、神経症状12級の原則通り、10年の限度でしか逸失利益を認めないとの回答であったため、訴訟を提起することにしました。
訴訟の場で、加害者側弁護士は、これに加え、事故後の減収は、Aさんが仕事をできなかったからだけでなく、Aさんの勤務先の経済的不安による部分もあるとの主張を行いました。
Aさんの勤務先に、そのような事情があったのは確かです。しかし、減収が単に会社の経営不安によるものであるとすれば、長期間にわたって職場を離脱した上、復職後も元通りの仕事ができなくなったAさんは、真っ先にリストラの対象となるはずです。
しかし実際には、長期間のブランク後も復職が許され、内勤の仕事で活躍の場が与えられました。Aさんは、その能力が認められ、会社にとって必要な人材であったからこそ、復職ができたのです。サリュはこの点を強く主張し、訴訟上の和解では、サリュ主張の通り、事故前年の収入を基礎とした、67歳までの逸失利益が認められました。
怪我で痛い思いをするのも辛いが、治療で仕事を休んだために経済的に追い込まれたり、仕事を奪われたりすることが何よりも辛く悔しいと、多くの交通事故被害者の方が口をそろえておっしゃいます。サリュは、そんな被害者の方ひとりひとりと共に、被害者が事故で受けた諸々の損害を、賠償金という形で少しでも補えるように、戦い続けたいと考えています。