高次脳機能障害かもしれません
一見普通だけれど、どこか、以前と違う。怒りっぽい、忘れやすい、疲れやすく、すぐ寝てしまう。事故後にこんな変化はありませんか?
高次脳機能障害は自賠責の認定基準が厳しいため、裁判になる場合に備えて、十分な資料を準備しておく必要があります。
該当する可能性のある等級
等級 | 認定基準 | 自賠責基準の慰謝料 | 裁判基準の慰謝料 |
---|---|---|---|
第1級 | 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出する事が出来ず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことが出来ても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことが出来ないもの | 958万円 | 2,370万円 |
第3級 | 自宅周辺を一人で外出出来るなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全く出来ないか、困難なもの | 829万円 | 1,990万円 |
第5級 | 単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習出来なかったり、環境が変わると作業を継続出来なくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことが出来ないもの | 599万円 | 1,400万円 |
第7級 | 一般就労を維持出来るが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことが出来ないもの | 409万円 | 1,000万円 |
第9級 | 一般就労を維持出来るが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持久力などに問題があるもの | 245万円 | 690万円 |
上記表の金額は慰謝料のみについてです。この他に、収入と年齢と後遺障害の程度によって変動する逸失利益も支払われます。場合によってほぼゼロに近いケースから慰謝料と同規模、もしくはそれ以上の計算となります。多くの保険会社の提示額は自賠責保険基準(低額)に準じたものです。弁護士に依頼すると、裁判基準で支払われるケースが多くなります。
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高次脳機能障害の特徴
高次脳機能障害とは脳に損傷を受けたことにより、認知、記憶、思考、注意の持続等、「高次脳機能」に障害が生じた状態をいいます。高次脳機能障害の特徴は、他の病気と違って、一見正常に見えるため、周りの人が気づきにくいところにあります。
傷病名
脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫、外傷性痴呆、クモ膜下出血、びまん性脳損傷、びまん性軸索損傷など
後から症状がわかっても、慌てずに再申請を
事故後に人が変わったようになってしまうケースもあれば、日常生活に大きな支障はなく、仕事に復帰してから問題が生じ、そのとき初めて高次脳機能障害だとわかるケースもあります。
「既に書類を提出してしまったのに…!」そんなときも、慌てず申請書類の再提出をしましょう。後遺障害等級認定は、原則として時効でない限り何度でも再申請をすることができます。
後遺症害として認められるためには
1.自賠責の認定基準は厳しいため、裁判で争う必要がある場合があります。
自賠責の後遺障害認定において、高次脳機能障害が後遺障害として認められるには、次の条件を満たす必要があるといわれています。
①初診時に頭部外傷の診断があったこと
②頭部外傷後に重い意識障害が6時間以上あったか、軽い意識障害が1週間以上継続したこと
③診断書に、高次脳機能障害、脳挫傷、びまん性軸索損傷等の記載があること
④診断書に、高次脳機能障害を示す典型的な症状の記載があり、知能検査、記憶検査等の神経心理学的
⑤検査で異常が明らかとなっていること
⑥頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳質拡大・脳萎縮が確認されたこと
しかしながら、②の意識障害や⑤の画像上の異常がない場合でも、脳が損傷を受けていると考えられる場合は多く、自賠責の基準は形式的過ぎるといわれています。このような場合には、裁判で後遺障害として認めてもらえるよう戦うほかありません。
自賠責で後遺障害として認められることが望ましいですが、裁判になる場合に備えて、十分な資料を準備しておく必要があります。
2.専門の病院を受診する
高次脳機能障害はこのように複雑な病気であることから、脳神経外科、整形外科のみならず、神経心理学、リハビリテーションにも精通した専門の病院で診断を受ける必要があります。
厚生労働省は、高次脳機能障害に関して、支援の拠点となる機関(高次脳機能障害情報・支援センター)を設けているので、これらの機関を利用するのが望ましいです。
3.画像を撮影する
交通事故の被害に遭った方に、高次脳障害の典型的な症状が現れた場合には、すぐにMRIを撮影しましょう。医師は難色を示すかもしれませんが、事故から時間が経てば経つほど、異常を発見するのが難しくなることがあります。まずは、画像を撮影しましょう。
もっとも、ただ画像を撮影すればよいというものではありません。少なくとも1.5テスラ以上の精度の高いMRIを撮影してください。画像を撮影して、異常が発見されれば、それである程度説明がつきますが、異常が発見されないこともあります。
画像上、異常がない場合でも脳が損傷を受けている場合があるというお話をしましたが、そのほかに、受傷直後には損傷が画像に表れないケース(例えば、びまん性軸索損傷)もあります。
この場合、約3ヶ月から6ヶ月後に画像を撮影すると、脳室という脳の部位が拡大していることがありますので、注意が必要です。
4.神経心理学的な検査をする
脳がつかさどる機能には、知能、言語、記憶力など様々なものがありますが、どの機能の検査が必要かによって、実施する検査が異なります。知能の検査が必要な場合には、知能テストであるWAIS-R、長谷川式簡易痴呆スケールがよく用いられており、記憶力の検査が必要な場合には記憶検査であるWMS-R、三宅式記銘検査などがよく用いられます。
他にも多くの検査があります。ここでは、長谷川式簡易痴呆スケールを例として挙げます。長谷川式簡易痴呆スケールは、日本で広く使用されている認知症の検査方法で、以下の9の設問から構成されます。30点満点で、20点以下の場合には、認知症の疑いがありとされています。高次脳機能障害にも応用されている検査なのです。
5.リハビリに通う
リハビリに通っていなければ、高次脳機能障害であることを示す客観的な資料が残っていきません。定期的にリハビリに通うことが、基本的なことでありながら、実はもっとも大事なことです。
6.後遺障害診断書を書いてもらう
リハビリに通うのは大事ですが、リハビリに長く通えばよいわけではありません。リハビリにも限界があるので、リハビリがその効果をあまり発揮しない時期が訪れます。この場合、後遺障害が残ったことになるので、適切な時期に後遺障害として診断してもらう必要があります。
ところで、後遺障害診断書は、後遺障害を認定してもらうに当たって、一番大事なものです。この記載がずさんだと、後遺障害が残ったにもかかわらず認められない、あるいは、後遺障害の重さが軽く評価されるという事態が起きてしまいます。
また、後遺障害診断書のほかにも、神経系統の障害に関する医学的意見、日常生活状況報告といった重要な書類を作成する必要があり、この記載方法も重要になってきます。
お医者さんは、患者さんの症状を改善するための治療やリハビリには熱心ですが、治療にとっては意味を持たない診断書等の作成に関心を示してくれないことが多いです。
後遺障害を適切に評価され、適切な損害賠償を受けるには、専門家による適切なアドバイスが求められるといえるでしょう。
7.認定のポイント
高次脳機能障害を負った被害者が、事故前の仕事を継続していた場合、就労を維持できるのであるから、5級以上は認められないのではないかと考えられがちです。しかし、5級の認定基準には、「就労の維持に職場の理解と援助を欠かすことが出来ないもの」と書いてあります。一見、就労を維持できていたとしても、職場の理解と援助によるものであれば、5級は認定されるのです。そうであれば、我々はそのことを証明しなければなりません。
高次脳機能障害という後遺障害は目に見えません。例えば、記憶力が低下したといっても、周りの人には分かりません。
しかし、メモを取らなければ記憶できない人はどうでしょう。その積み重ねたメモは記憶できないことの何よりの証拠ではないでしょうか。
自賠責で後遺障害として認められないようなケースでは、裁判でこういった細かなことを積み重ねていくしかありません。
適正な後遺障害等級獲得のための診断書作成もアドバイス
後遺障害診断書はとても大事なので、できれば後遺障害診断書を作成する前に、交通事故被害者側専門の弁護士法人サリュにお問合せいただき、無料法律相談にお越しください。
医師が、後遺障害獲得のための適正な診断書を書けるとは限りません。医師は治療の専門家ですが、後遺障害等級認定の専門家ではないからです。治療には不要でも、認定のためには必要な検査もあります。
適切な後遺障害等級認定を獲得するにはポイントがあります。お早めのご相談が功を奏します。
なるべくお早めにご相談ください。無料相談の際、どのくらい賠償金が上がるのか、目安をお話しします。